特定技能のりあい窓口

https://tokutei-noriai.blog/ikusei-shuro-tenseki/ 印刷日:2026年10月15日

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  • 2026年10月版

育成就労の転籍ルール|本人意向の転籍の条件と、受け入れ企業の初期費用の扱い

転籍は「同じ業務区分」「制限期間の経過」「試験合格」がそろって初めてできる。費用の補填の仕組みも表で示す

育成就労の転籍は、2027年4月1日から、本人の意向でもできるようになります。ただし、同じ業務区分の中であること、分野ごとの転籍制限期間を過ぎていること、技能と日本語の試験に合格していることなど、6つの条件がそろった場合に限られます。転籍を受け入れる会社は、元の会社が負担した初期費用の一部を、就労期間に応じた割合で支払います。この記事では、出入国在留管理庁の育成就労Q&Aと関係資料をもとに、転籍の条件、分野別の制限期間、人数の上限、初期費用の補填の考え方を、受け入れる会社と送り出す会社の両方の目線で整理します。

この記事の結論
  • 本人意向の転籍には6つの条件:同じ業務区分の中で、分野ごとの転籍制限期間(1年か2年)を過ぎ、技能(初級)と日本語(A2.1相当以上)の試験に合格していることなどが必要です。
  • 民間の職業紹介を使った転籍は認められない:転籍先は優良な実施者に限られ、転籍者の割合は3分の1以下(大都市圏が地方から受け入れる場合は6分の1以下)です。
  • 初期費用は「告示の額×按分率」で補填:転籍元での就労が1年6か月未満なら6分の5、2年6か月以上なら4分の1。告示の額は2026年10月時点のQ&Aでは「まだ制定されていない」とされています。

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この記事の目次

育成就労の転籍とは:2種類あり、どちらも同じ業務区分の中だけ

育成就労の転籍は2種類です。人権侵害などを受けた場合の「やむを得ない事情による転籍」と、2027年4月から新しく認められる「本人意向による転籍」です。どちらも、転籍先は同じ業務区分の中に限られます。

技能実習では、本人の希望で実習先を変えることは認められていませんでした。育成就労は外国人を労働者として保護する観点から、条件つきで本人の意向による転籍を認めます。受け入れる会社にとっては「育てた人が移る可能性」と「転籍者を受け入れる機会」の両方が生まれる変更です。

図1育成就労の2種類の転籍

やむを得ない事情による転籍

  1. 暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合など
  2. 技能実習の制度から引き継ぐ仕組み
  3. 転籍先は同じ業務区分の中

本人を守るための転籍で、本人意向の転籍の6つの条件とは別の扱いです。

本人意向による転籍

  1. 2027年4月1日から新しく認められる
  2. 制限期間・試験合格など6つの条件
  3. 転籍先は同じ業務区分の中

転籍先が、元の会社の初期費用の一部を負担します。

どちらの転籍でも、農業から漁業のように分野や業務区分をまたぐことはできません。出典:出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」(2026年10月14日確認)

主たる技能は変えられるが、好ましくない

同じ業務区分の中の転籍なら、主たる技能を変えることはできます。ただしQ&Aは、効率的・効果的な人材育成の観点から、転籍の前後で主たる技能を変えるのは好ましくないとしています(Q52)。受け入れる側は、前の会社で何を身につけたかを確かめて、育成計画をつなげる必要があります。

会社にとっての意味:「育てた人が移る」だけではない

転籍のルールは、送り出す側にとってはリスクです。一方で受け入れる側にとっては、すでに1〜2年の経験と試験の合格を持つ人を迎える機会でもあります。ただし受け入れられるのは優良と認められた会社だけで、転籍元への支払いも生じます。自社がどちらの立場になりやすいかを考えておくと、待遇や育成の計画を立てやすくなります。

本人意向の転籍の6つの条件

本人の意向による転籍は、次の6つがすべてそろった場合に限られます。本人の側の条件が3つ、転籍先の会社の側の条件が3つと考えると整理しやすくなります。

図2本人意向の転籍に必要な6つの条件

  • 1技能と日本語の試験に合格

    分野別運用方針で定める水準。技能は育成就労評価試験(初級)など、日本語はA2.1相当以上です。

  • 2転籍制限期間を過ぎている

    今の会社で、分野ごとに決められた1年か2年の期間を超えて働いていること。

  • 3民間の職業紹介を受けていない

    転籍にあたり、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないこと。

  • 4転籍先が優良な実施者

    試験の合格率や法令の順守状況などから、優良と認められた会社であること。

  • 5転籍者の割合が一定以内

    転籍先の育成就労外国人のうち、本人意向の転籍者は原則3分の1以下。

  • 6転籍先が初期費用の一部を払う

    告示で定める額に、転籍元での就労期間に応じた按分率をかけた額を支払います。

1〜3は本人の側、4〜6は転籍先の会社の側の条件です。出典:出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」(2026年10月14日確認)、出入国在留管理庁「分野別運用方針の主要な記載事項」(2026年1月23日閣議決定)

技能は1年経過時と同じ、日本語はその一段上

転籍時に求められる技能は、育成就労を1年経過した時点と同じ水準とされ、育成就労評価試験(初級)や技能検定基礎級などで確かめます。日本語はA2.1相当以上で、育成就労制度の概要はJFT-Basicを例に挙げています。A2.1は、A1に到達し、A2.2(特定技能1号の水準)に向けて学習が進んでいる段階と説明されています。

延長された人は対象外

3年を超えて育成就労の期間が延長された人は、本人意向の転籍の対象になりません。延長は、1号へ移るための試験に不合格だった人が、最長1年の範囲で再挑戦するための期間です。

会社の日本語支援が、転籍の条件にもつながる

育成就労では、受入れ企業が3年の間にA2相当の日本語講習を100時間以上受けられる機会を用意する必要があります。日本語力が上がれば、1号への移行に近づくと同時に、転籍の条件であるA2.1相当にも届きます。日本語の支援を「転籍の準備」と見るのではなく、定着と育成の土台と考えるほうが、制度の向きに合っています。

育成就労の転籍制限期間:分野ごとに1年か2年

転籍制限期間は、今の会社で一定期間働くことを求める期間で、1年を目指しつつ、当分の間は分野ごとに1年から2年の間で決められています。2026年1月23日の閣議決定では、17分野のうち8分野が2年、9分野が1年です。

育成就労の分野別の転籍制限期間と受入れ見込数(2026年1月23日閣議決定)
分野転籍制限期間育成就労の受入れ見込数
介護2年33,800人
建設2年123,500人
造船・舶用工業2年13,500人
自動車整備2年9,900人
工業製品製造業2年119,700人
飲食料品製造業2年61,400人
外食業2年5,300人
資源循環2年3,600人
ビルクリーニング1年7,300人
宿泊1年5,200人
鉄道1年1,100人
農業1年26,300人
漁業1年2,600人
林業1年500人
木材産業1年2,200人
リネンサプライ1年3,400人
物流倉庫1年6,900人

2年の分野は、待遇の向上が条件

転籍制限期間が1年を超える分野では、分野別運用方針に定める育成就労外国人の待遇向上の措置を講じる必要があります。概略図は、その例として昇給を挙げています。2年の分野で受け入れる会社は、分野別運用方針が定める待遇向上の措置を、最初から計画に入れておく必要があります。

会社の判断で1年に短くできる

2年の分野でも、受入れ企業の判断で転籍制限期間を1年にできます(Q51)。短くすれば転籍の可能性は早まりますが、応募する人から見た職場の魅力にもなります。一度転籍した人がもう一度本人意向で転籍する場合も、改めて転籍制限期間を過ぎる必要があります(Q50)。

自社の分野の扱いを確かめる方法

制限期間や待遇向上の措置の中身は、分野別運用方針と、分野ごとの運用要領・上乗せ基準の告示で決まります。出入国在留管理庁の「育成就労制度の制度概要・関係法令」のページには、17分野の上乗せ基準告示が並んでいます。表の数字は2026年1月の閣議決定時点のものなので、受け入れの前に所管省庁の最新の資料で確かめてください。

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転籍を受け入れる側の条件と人数の上限

転籍者を受け入れられるのは、優良と認められた会社だけです。そのうえで、転籍元と同じ業務区分の仕事をさせ、人数枠を超えず、転籍者の割合を一定以内に収める必要があります。

図3本人意向の転籍者を何人まで受け入れられるか(計算例)

  • 育成就労外国人が転籍者を含め12人の会社12×3分の1=4 → 本人意向の転籍者は4人まで
  • 大都市圏の会社が地方から受け入れる(12人)12×6分の1=2 → 地方からの転籍者は2人まで
  • 大都市圏の会社が地方から受け入れる(5人)5×6分の1は1未満 → 6人未満の会社の特例で1人まで
  • 地方の会社が大都市圏から受け入れる(12人)3分の1のルールが適用 → 4人まで
計算では、今回転籍してくる人を分母と分子の両方に含めます。大都市圏は、東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫の8都府県のうち指定区域を除く地域です。出典:出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」(2026年10月14日確認)、出入国在留管理庁「育成就労制度の関係省令等について(概略図)」(2026年10月14日確認)

なぜ割合に上限があるのか

Q&Aは、在籍者の多くを転籍者が占める状態は人材育成の趣旨に反するとして、割合を制限しています(Q54)。地方から大都市圏への流出を防ぐため、大都市圏の会社が地方から受け入れる場合はさらに厳しい6分の1になります。

地方の会社から見ると、この6分の1のルールは、育てた人が大都市圏へ移る流れを抑える働きをします。指定区域にあたるかどうかは、外国人が働く場所ではなく、会社の本店所在地で判断されます(Q43)。

人数枠も超えられない

転籍者も、会社の常勤職員数に応じた人数枠の中で数えます。たとえば常勤職員101〜200人の会社の基本の枠は、1〜3年目の合計で30人です。人数枠の考え方は育成就労の受け入れ人数枠と費用で詳しく説明しています。

優良の基準はこれから示される

優良な実施者の具体的な基準と手続きは、決まり次第、運用要領で示される予定です(Q46)。Q&Aは、判断の要素として次の6つを挙げています(Q45)。

  • 技能と日本語の修得の実績
  • 育成就労を行わせる体制
  • 育成就労外国人の待遇
  • 法令違反や行方不明者の発生などの状況
  • 相談対応や保護・支援の体制と実施状況
  • 地域社会との共生に向けた取組

育成就労の転籍で初期費用はどう補填されるか

本人意向の転籍では、転籍先の会社が、転籍元の会社に一定の額を支払います。額は「告示で定める額」に、転籍元で働いた期間に応じた「按分率」をかけて決まり、早く移るほど転籍元が受け取る割合が大きくなります。

図4転籍先が転籍元に支払う額の決まり方

支払う額=告示で定める額取次ぎと育成にかかる費用として法務大臣・厚生労働大臣が定める×按分率転籍元での就労期間で決まる

告示の額は、2026年10月14日に確認した育成就労Q&Aでは「まだ制定されていない」とされています。出典:出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」(2026年10月14日確認)、出入国在留管理庁「育成就労制度の関係省令等について(概略図)」(2026年10月14日確認)

図5転籍元での就労期間ごとの按分率

  • 1年6か月未満6分の5
  • 1年6か月以上2年未満3分の2
  • 2年以上2年6か月未満2分の1
  • 2年6か月以上4分の1
転籍制限期間が2年の分野では、本人意向の転籍は2年を過ぎてからなので、按分率は2分の1以下になります。出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の関係省令等について(概略図)」(2026年10月14日確認)

制限期間と按分率の組み合わせで考える

1年の分野で、制限期間を過ぎてすぐ転籍すれば按分率は6分の5です。2年の分野では早くても2年を過ぎてからなので、2分の1か4分の1になります。告示の額が決まるまで金額は試算できませんが、割合だけは計画の段階で押さえておけます。

転籍の時期ごとの按分率と、起こり得る分野(編集部の整理)
転籍元での就労期間按分率制限期間1年の分野制限期間2年の分野
1年超〜1年6か月未満6分の5起こり得る1年に短くした場合だけ
1年6か月〜2年未満3分の2起こり得る1年に短くした場合だけ
2年〜2年6か月未満2分の1起こり得る2年を過ぎた後に起こり得る
2年6か月以上4分の1起こり得る起こり得る

紹介会社の返金規定とは別の仕組み

この補填は、法令にもとづいて転籍先が転籍元に払うものです。人材紹介会社との契約にある「早期退職時の返金規定」とは別の仕組みで、本人意向の転籍では民間の職業紹介を使うこと自体が認められません。特定技能などで紹介会社を使う場合の返金の考え方は早期退職時の返金規定で確かめてください。

育成就労の転籍では民間の職業紹介が禁止:誰が間に入るか

本人意向の転籍の条件の1つが、「転籍に当たって、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないこと」です。民間の人材紹介会社を通じて転籍先を見つけた場合、この条件を満たしません。

では誰が間に入るのか。Q&Aは、監理支援機関が転籍の申出があった場合に関係機関との連絡調整などを担うとしています(Q32)。手続きの具体的な内容は、決まり次第示される予定です(Q49)。

図6本人意向の転籍の手続きの流れ(2026年10月時点で示されている範囲)

  1. 本人が転籍の希望を申し出る法律上、育成就労外国人が本人意向の転籍を希望する申出を行います。
  2. 監理支援機関が連絡調整監理型の場合、監理支援機関が関係機関との連絡調整などを担います。
  3. 転籍先が育成就労計画を作る受け入れる会社が、その人の育成就労計画を新たに作成します。
  4. 外国人育成就労機構へ認定申請計画の認定を受けて、転籍先での育成就労が始まります。
具体的な様式や日数は、2026年10月時点では示されていません。出典:出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」(2026年10月14日確認)

監理支援機関に今のうちに聞いておくこと

  • 転籍の申出があったとき、会社にはいつ、どのように連絡が来るか
  • 本人の相談を受けたとき、会社と監理支援機関のどちらが何を担うか
  • 転籍先として受け入れる場合、計画づくりをどこまで手伝ってもらえるか
  • 告示の額が決まったら、支払いと受け取りの手続きをどう案内してもらえるか

特定技能の転職との違い

特定技能1号は、同じ分野の中なら本人の意思で転職でき、制限期間や初期費用の補填の仕組みはありません。新しい会社は在留資格の変更許可を受けた後に働いてもらいます。手続きの違いは特定技能外国人の転職ルール、特定技能の全体像は特定技能とは?で確かめられます。

転籍元・転籍先の会社がすること(チェックリスト)

転籍は、送り出す会社にも受け入れる会社にも準備が要ります。2027年4月1日から適用される外国人雇用管理指針の改正部分は、育成就労について転籍の制限を説明することなどを定めています。採用の段階から、ルールを本人に伝えておくことが出発点です。

転籍元(育てる会社)のチェックリスト

  • 転籍の条件と制限期間を、雇用契約の前に本人が分かる言語で説明した
  • 2年の分野なら、待遇向上の措置(昇給など)を計画に入れた
  • 就労開始日と在籍期間を記録し、按分率の区切りを把握している
  • 技能と日本語の学習時間を確保し、相談の窓口を決めている
  • 転籍を理由にした不利益な扱いや、引き止めのための書類の預かりをしない

転籍が決まったときの段取り

本人から転籍の希望が出たら、まず面談で理由を聞き、職場で直せることがないかを確かめます。そのうえで、監理支援機関と連絡を取り、業務の引継ぎ、住まい、最後の給与の精算を順に決めます。按分率の区切りを確かめるため、就労を始めた日と在籍期間の記録をすぐ出せるようにしておきます。

転籍先(受け入れる会社)のチェックリスト

  • 自社が優良な実施者の基準を満たすか、運用要領で確かめた
  • 同じ業務区分の仕事で、前の会社での技能につながる計画を作れる
  • 人数枠と転籍者の割合(3分の1、または6分の1)に収まる
  • 民間の職業紹介を通じた話ではない
  • 転籍元に支払う額(告示の額×按分率)を予算に入れた

受入れ企業としての基準は受入れ機関の基準、費用を見直すときの考え方は費用を抑える方法が参考になります。

外食業で育成就労を考える会社へ

外食業は、育成就労の転籍制限期間が2年の分野で、受入れ見込数は5,300人です。特定技能1号の受入れ見込数50,000人の約1割で、分野全体の上限に近づけば計画の認定が一時停止される仕組みもあります。受け入れを考えるなら、計画は早めに立てる必要があります。

特定技能の外食業は新規の受け入れが止まっている

特定技能の外食業では、2026年4月13日から在留資格認定証明書の交付が一時停止されています。2026年9月10日掲載の情報では、交付の対象は受付日が1月31日までの申請に限られます。農林水産省は、外食業特定技能1号評価試験を当面の間、国内外ともに実施しないとしています。育成就労の3年後に1号へ移るときの扱いは、今後の公表を確かめる必要があります。

2年の分野で受け入れる会社の準備

2年の分野では、待遇向上の措置が前提です。昇給の時期と条件を、雇用契約の前に本人が分かる言語で示せるようにしておきます。複数店舗の会社なら、転籍の条件や補填の仕組みを店長にも説明しておくと、現場で誤った説明をしてしまうことを防げます。人数枠は常勤職員数で決まり、たとえば常勤職員101〜200人の会社なら基本の枠は3年合計で30人です。育成就労の全体像は育成就労制度とは?で整理しています。

想定ケース:居酒屋チェーン(従業員130人)の事務長が、転籍のルールを先に社内に説明した理由

想定ケース(利用イメージ)について:この章は、特定技能の会社選びでよく寄せられる相談をもとに、編集部が場面を再構成した想定インタビューです。実在の企業・人物の発言ではありません。数値は公的資料にもとづく目安です。

  • 転籍の条件と費用の考え方を1枚にまとめ、店長12人への説明を15分で終えた
  • 2年目に向けた昇給表を作り、育成就労の受け入れ計画(2027年度に4人)を役員会で決めた
  • 特定技能の外国人スタッフの退職が、前年の年5人から年1人に減った

――転籍のルールを社内に説明して、何が変わりましたか。

店長たちの「育てても辞められる」という不安が、具体的な話に変わりました。外食業は転籍制限期間が2年で、転籍は試験に受かってから、しかも同じ業務区分の中だけ。それを1枚の紙で見せたら、「それなら2年の間にここで働きたいと思ってもらえばいい」と、店長会の空気が変わりました。説明の後は、店長から「何を変えれば残ってもらえるか」という質問が先に出るようになっています。

――そもそも育成就労を考えたきっかけは。

特定技能で12人を受け入れてきましたが、外食業は海外からの新しい受け入れが止まっています。厨房もホールも人が足りない。2027年から始まる育成就労を、次の手として検討し始めました。

――検討の前に困っていたことは。

特定技能の人が、近くの同業に移ってしまうことです。前の年は5人が辞めました。理由を聞くと、時給の差は月数千円なのに、昇給の見通しが見えないという声が多かった。育成就労でも同じことが起きると思い、正直、受け入れに後ろ向きな役員もいました。

――何が決め手になりましたか。

初期費用の補填の仕組みです。告示の額はまだ決まっていませんが、転籍先が払う割合は決まっています。2年の分野なら半分か4分の1。つまり費用で引き止めるのではなく、待遇で残ってもらうしかない。監理支援機関の担当者にそう話したら、「2年の分野では、昇給などの待遇向上の措置が条件になります」と言われました。考えていたことと制度の向きが同じだと分かり、腹が決まりました。

――店長たちには、どう説明しましたか。

質問が多かったのは「うちの店に来る転籍者もいるのか」でした。受け入れられるのは優良と認められた会社だけで、人数も3分の1までと決まっている。逆に、うちが優良と認められれば、経験と試験合格のある人を迎えられるかもしれない。そう話すと、店長たちの顔つきが少し変わりました。面接で転籍のルールを聞かれたら、事務長に回すことも決めています。

――準備で工夫したことは。

昇給表を、特定技能の人にも同じ考え方で作り直しました。半年ごとに面談をして、次の昇給の条件を母語の紙で渡しています。この1年で特定技能の退職は1人に減りました。転籍の説明も、採用面接の段階で必ずすることにしています。

――まだ決まっていないことへの不安は。

告示の額と、手続きの細かい流れです。そこは決まり次第、監理支援機関から連絡をもらう約束にしました。分からないことを分からないと言ってくれる担当者だったので、待つことにも納得しています。

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よくある質問

育成就労で採用した人が転籍したら費用は戻る?

本人意向の転籍なら、転籍先が転籍元に一定の額を支払います。額は告示で定める額に、転籍元での就労期間に応じた按分率(6分の5〜4分の1)をかけて決まります。告示の額は、2026年10月14日に確認したQ&Aでは「まだ制定されていない」とされています。

本人意向の転籍は、入社から何年たてばできますか?

分野ごとの転籍制限期間を過ぎてからです。外食業・介護・建設・工業製品製造業など8分野は2年、宿泊・農業・漁業など9分野は1年です。2年の分野でも、会社の判断で1年にできます。

別の分野や別の仕事に転籍することはできますか?

できません。やむを得ない事情による転籍も本人意向の転籍も、転籍先は同じ業務区分の中に限られます。同じ業務区分の中なら主たる技能を変えることはできますが、Q&Aは好ましくないとしています。

人材紹介会社を通じて転籍先を探してもよいですか?

本人意向の転籍では認められません。民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないことが条件です。監理型では、監理支援機関が転籍の申出に関する連絡調整などを担います。

転籍されないために、会社ができることは何ですか?

転籍の条件を採用前に説明し、昇給の見通しや相談の窓口を具体的に示すことです。転籍制限期間が2年の分野では、待遇向上の措置を講じることが前提になります。引き止めのために旅券や在留カードを預かるなど、本人の自由を縛る行為はしてはいけません。

小さな会社でも転籍者を受け入れられますか?

優良な実施者と認められれば受け入れられます。転籍者は育成就労外国人の3分の1以下が原則です。大都市圏の会社が地方から受け入れる場合は6分の1以下ですが、6人未満の会社は1人まで受け入れられます。

転籍で受け入れた人も、人数枠に数えますか?

数えます。転籍先の要件の1つが、受入れに係る人数枠を超えていないことです。人数枠は常勤職員数に応じて決まり、1〜3年目の育成就労外国人の合計で数えます。

やむを得ない事情による転籍とは、どんな場合ですか?

暴力やパワーハラスメントなどの人権侵害を受けた場合などです。技能実習から引き継ぐ仕組みで、本人を守るための転籍です。この場合も、転籍先は同じ業務区分の中に限られます。

特定技能の転職とは何が違いますか?

特定技能1号は、同じ分野の中なら本人の意思で転職でき、制限期間や試験の条件、初期費用の補填はありません。育成就労は、制限期間・試験合格・転籍先の優良要件などがそろったときだけ本人意向で転籍できます。

この記事の編集方針と出典

  • 制度・数値は、出入国在留管理庁・厚生労働省・所管省庁・自治体などの公表資料で確認し、時点を書いています(確認日:2026年10月14日)。
  • 制度は改正されることがあります。申請の前に、必ず最新の公表資料で確認してください。
  • 「想定ケース」は、よくある相談をもとに編集部が再構成したもので、実在の企業・人物の発言ではありません。
  • 特定技能のりあい窓口は、掲載している人材紹介会社・登録支援機関から紹介手数料を受け取る場合があります。手数料の有無で、ご提案の順番や内容は変えません。
  • 誤りにお気づきの場合は、下のフォームからお知らせください。確認のうえ修正します。

出典

  1. 出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」(2026年10月14日確認)
  2. 出入国在留管理庁「育成就労制度の関係省令等について(概略図)」(2026年10月14日確認)
  3. 出入国在留管理庁「分野別運用方針の主要な記載事項」(2026年1月23日閣議決定)
  4. 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(2026年7月改訂)
  5. 出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」(2026年10月14日確認)
  6. 労働政策研究・研修機構「外国人雇用管理指針」改正告示(2026年5月29日)
  7. 出入国在留管理庁「特定技能制度」(2026年10月)
  8. 出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」(2026年10月)
  9. 出入国在留管理庁「特定技能1号(外食業分野)の在留諸申請の審査状況」(2026年9月10日掲載)
  10. 農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れ」(2026年10月確認)

最終更新:(2026年10月版)

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