特定技能のりあい窓口

https://tokutei-noriai.blog/harassment/ 印刷日:2026年10月15日

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外国人社員へのハラスメント防止|言葉・指導・差別の線引き

「冗談のつもり」「指導のつもり」が通じにくい職場で、言動の線引きと相談の入口を先に決める

外国人社員を受け入れてから、「この言い方はパワハラになるのか」「冗談のつもりの一言が問題にならないか」と迷う場面が増えた。そう感じている採用担当者は少なくありません。外国人社員へのハラスメント防止は、日本人社員と同じ法律上の義務に、言葉と文化の違いへの備えを足して考えます。この記事では、現場で起きやすい言動をパワハラの6つの型で整理し、指導との線引き、母語で相談できる窓口の作り方、相談を受けた後の手順、2026年10月から義務になったカスタマーハラスメント対策までを、厚生労働省と出入国在留管理庁の資料で示します。

この記事の結論
  • 外国人社員にも同じ法律が適用される:パワハラ防止の措置は中小企業も2022年4月から義務です。厚生労働省と出入国在留管理庁は、対象が「特定技能外国人を含む全ての労働者」だと受入れ機関に通知しています。
  • 判断の基準は言った側の意図ではない:同じ状況で平均的な労働者がどう感じるかで判断されます。国籍・見た目・日本語の上手下手を話のネタにしない、と社内で決めておくと迷いが減ります。
  • 相談の入口は3つ用意する:社内の窓口、登録支援機関などの母語の窓口、公的な窓口(外国人労働者向け相談ダイヤルは13言語)を、入社の日にカードで渡します。
  • 2026年10月からカスハラ対策も義務:客や利用者からの差別的な言動に、誰がどの時点で代わるかを決めておきます。

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この記事の目次

結論:外国人社員へのハラスメント防止は「線引き・相談・対処」を先に決める

外国人社員へのハラスメントも、日本人社員へのハラスメントと同じ法律で扱われます。パワーハラスメント(パワハラ)を防ぐ措置は、中小企業も2022年4月1日から義務です。違いが出るのは現場の伝わり方です。言葉と習慣が違うと、「指導のつもり」「冗談のつもり」の一言が重く届き、本人も声を上げにくくなります。

だからこそ、問題が起きる前に3つを決めておきます。どこからがアウトかという言動の線引き、本人が母語でも相談できる入口、相談を受けた後の対処の手順です。日本人社員とも共有すれば、現場の指導を萎縮させずに済みます。

図1外国人社員へのハラスメント防止の3本柱

  • 言動の線引きパワハラの6つの型と、国籍・言葉・宗教・在留資格をめぐる「言わないこと」を、具体的な言い回しで共有する。
  • 相談の入口社内の窓口、登録支援機関などの母語の窓口、公的な窓口の3つを、入社の日にカードで渡す。
  • 対処の手順事実確認、本人を守る配置、行為者への措置、再発防止までを、担当者と期限つきで決めておく。
3本のうち1本でも欠けると、問題が表に出ないまま長引きます。

被害を受けても「何もしない」人が多い

厚生労働省の調査では、過去3年間にパワハラを受けた労働者は19.3%でした。受けた後の行動は「何もしなかった」が36.9%で最も多い回答です。外国人住民を対象にした法務省の委託調査では、差別的なことを言われた経験がある人が29.8%いました。その相手として「職場の上司や同僚・部下、取引先」を挙げた人は38.0%です。

図2ハラスメントと差別的な言動の経験(公的調査)

  • 19.3%過去3年間にパワハラを受けた労働者8,000人(日本人を含む全体)
  • 36.9%受けた後「何もしなかった」パワハラを受けた1,546人の回答
  • 29.8%差別的なことを言われた外国人住民回答4,252人(2016年調査)
  • 38.0%相手が職場の上司・同僚・取引先など言われた経験がある1,269人の回答
被害の多くは、相談として表に出てきません。出典:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書概要」(2024年1月調査)、法務省委託調査「外国人住民調査報告書」(2016年11〜12月調査)

相談先を知らない、日本語でうまく説明できない。外国人社員はそうした事情を抱えがちなので、相談が少ない職場ほど入口を増やします。

外国人社員へのハラスメント防止で会社が負う義務

会社の義務は3つの層で整理できます。日本人と同じ「ハラスメント防止の措置」、国籍を理由にした「差別的取扱いの禁止」、そして特定技能を受け入れる会社に上乗せされる「基準と支援」です。

外国人社員へのハラスメント防止に関わる主な決まり(2026年10月時点)
決まり会社に求めること外国人社員での注意点
労働施策総合推進法(パワハラ)方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速で適切な対応、プライバシーの保護と相談者への不利益取扱いの禁止特定技能外国人も対象と、国が受入れ機関に通知済み
同法・男女雇用機会均等法の改正(2026年10月1日施行)カスタマーハラスメントと、求職者等へのセクシュアルハラスメントの防止措置客や利用者と話す外国人スタッフ、面接に来る外国人求職者も対象
労働基準法3条国籍・信条・社会的身分を理由に、賃金・労働時間などの労働条件で差別しない「外国人だから」手当や昇給に差を付けない
特定技能の基準省令報酬は日本人と同等以上。国籍を理由に報酬・教育訓練・福利厚生施設の利用で差別しない守れないと受入れの継続に関わる
1号の義務的支援相談・苦情に、本人が十分理解できる言語で遅滞なく対応する勤務日に週3日以上、休日に1日以上の対応が求められる
外国人雇用管理指針苦情・相談体制の整備と、行政の相談窓口の案内(努力義務)旅券・在留カードを会社が保管しないことも求めている

特定技能外国人も対象と、国が2回通知している

厚生労働省と出入国在留管理庁は、2020年2月14日と2026年5月14日に、特定技能の受入れ機関と登録支援機関に宛ててハラスメント防止の通知を出しました。2026年の通知は、対象が「特定技能外国人を含む全ての労働者及び求職者等」だと明記しています。登録支援機関は雇用関係がないため措置の義務はありません。それでも、自らの役職員が同じような言動をしないよう努めることが求められています。

図3ハラスメント防止の義務と、特定技能の受入れ機関への通知

  1. 受入れ機関・登録支援機関へ通知通知済み

    パワハラ防止の措置は、特定技能外国人を含む全ての労働者が対象だと周知されました。

  2. 大企業でパワハラ防止措置が義務に施行済み

    改正労働施策総合推進法の施行です。

  3. 中小企業も義務に施行済み

    規模を問わず、すべての事業主の義務になりました。

  4. 受入れ機関・登録支援機関へ再び通知通知済み

    カスハラと求職者等へのセクハラの防止を、特定技能の関係者に周知しました。

  5. カスハラ・求職者等セクハラの防止措置が義務に施行済み

    改正されたパワハラ指針なども、同じ日から適用されています。

外国人社員へのハラスメントだけを扱う特別な法律はなく、すべての労働者向けの義務がそのまま及びます。出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(2026年10月確認)、厚生労働省・出入国在留管理庁の通知(2020年2月14日)、同通知(2026年5月14日)

「差別的取扱い」と「ハラスメント」は分けて点検する

国籍を理由に手当、昇給、研修の機会、寮の設備に差を付けるのは、労働条件の差別的取扱いです。国籍や言葉をからかう言動は、職場環境を害するハラスメントの問題です。前者は賃金台帳と規程で、後者は相談記録と面談で確かめます。指針の項目ごとの点検表は外国人雇用管理指針のポイントにまとめています。

外国人社員へのパワハラになりやすい言動:6つの型と現場の例

パワハラにあたるのは、次の3つをすべて満たす言動です(厚生労働省のパワハラ指針)。①優越的な関係を背景としている。②業務上必要かつ相当な範囲を超えている。③労働者の就業環境が害される。業務上必要で相当な範囲の指示や指導は、パワハラに当たりません。

「優越的な関係」は上司だけではない

指針は、上司の言動のほか、業務に必要な知識や豊富な経験を持つ同僚の言動、同僚や部下の集団による行為も含めています。日本語ができる先輩が通訳役を兼ねる職場では、その先輩の協力なしに仕事が回らない関係が生まれるので、肩書の上下がなくても注意します。

パワハラの6つの型:外国人社員の職場で起きやすい例と、指針が「該当しない」とする例
型起きやすい例(編集部の例)該当しないと考えられる例(指針)
身体的な攻撃作業が遅いと肩を小突く。道具を投げて渡す誤ってぶつかる
精神的な攻撃「これだから外国人は」と人前で怒鳴る。日本語の言い間違いを何度も笑う再三注意しても遅刻を繰り返す人に、一定程度強く注意する
人間関係からの切り離し同じ国の社員だけ休憩場所を分ける。日本語が苦手だからと連絡のグループから外す新しく採用した人の育成のため、短期間集中して別室で研修する
過大な要求教えていない作業を口頭の早口の説明だけで任せ、できないと責める。私的な用事を頼む育成のために少し高いレベルの仕事を任せる。繁忙期に一時的に業務を増やす
過小な要求日本語が苦手だからと、契約した仕事を与えず掃除だけさせる能力に応じて、一定程度業務の内容や量を軽くする
個の侵害休日の行動や交際相手を詮索する。宗教や病歴を本人の了解なく他の社員に話す配慮のために家族の状況などを聞く。了解を得て、必要な範囲の人に伝える

特定技能では、雇用契約で決めた分野の業務に従事させることが基準です。「過小な要求」の例のように契約の仕事を与えない扱いは、ハラスメントの問題に加えて、受入れの基準にも関わります。

判断は「平均的な労働者の感じ方」で

就業環境が害されたかどうかは、「平均的な労働者の感じ方」で判断します。同じ状況で同じ言動を受けたときに、社会一般の労働者が働くうえで見過ごせない支障を感じるか、という基準です。言った側の意図は決め手になりません。業務上の必要性を見るときも、言動の目的や経緯、頻度とあわせて、受けた人の属性や心身の状況が考慮されます。日本語の説明を理解できていない人に、同じ方法で同じ注意を繰り返す。これは指導の形をとっていても、相当な範囲を超えたと見られるおそれが高まります。

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職場での外国人への差別:国籍・言葉・宗教・在留資格の線引き

外国人社員の職場に特有なのは、国籍や出身国、日本語の力、宗教、在留資格を持ち出す言動です。本人の努力では変えられないことをからかう言動や、仕事や在留を失うことをちらつかせる言動は、指針が挙げる「人格を否定するような言動」や威圧に当たり得ます。社内では、避ける言い方を名指しで共有します。

図4線を越えやすい言動と、代わりの言い方

  • 国籍・出身国「あなたの国の人はルーズだ」「だから外国人は」と言わない。→「集合は8時でした。次は7時55分に来てください」と、行動と事実だけを伝える。
  • 日本語の力発音をまねて笑う、「分からないなら黙って」と言わない。→「もう一度、ゆっくり言います」「どこが分かりませんか」と聞き直す。
  • 宗教・食事・習慣礼拝や食べられない物を冷やかさない。無理に飲食をすすめない。→休憩の取り方や配慮の内容は本人と決め、了解なく他の人に話さない。
  • 在留資格・帰国「ビザを取り消すぞ」「国に帰すぞ」と脅さない。旅券や在留カードを預からない。→在留の手続きは事実だけを説明し、書類は本人が持つ。
編集部の整理です。外国人雇用管理指針は、事業主が外国人労働者の旅券や在留カードを保管しないよう求めています。出典:厚生労働省「外国人雇用管理指針」(令和8年5月29日改正を反映)

「日本語で話して」は場面で分ける

安全や品質のために、作業中の指示と報告を日本語に統一するのは業務上の理由があります。一方で、理由を説明しないまま母語を一律に禁じたり、休憩中の私的な会話まで注意したりすると、業務の必要性からは説明しにくくなります。ルールにするなら「どの場面で、なぜ」を本人の分かる言葉で書いて渡しましょう。

待遇の差は、言動とは別に点検する

「外国人だから」と夜勤や重い作業を多く割り当てる、研修に呼ばない。こうした扱いは待遇の差別で、前の章の表のとおり、労働基準法と特定技能の基準で禁じられています。送出しの段階での借金や保証金の問題は二重契約・中間搾取の禁止で扱っています。

指導とパワハラの線引き:叱る前に確かめる5つのこと

外国人社員への指導で問われるのは、声の強さより伝わり方です。同じ注意でも、目的・内容・言い方・場所・回数の5つが整っていれば指導になり、崩れるとパワハラに近づきます。指針も、他の労働者の面前での大声の威圧的な叱責の繰り返しや、必要以上に長時間の厳しい叱責の繰り返しを、精神的な攻撃の例に挙げています。

図5同じ注意でも、伝え方で分かれる

指導として伝わる

  1. 目的:安全・品質・ルールを守るため
  2. 内容:何を、いつまでに、どう直すか
  3. 言い方:短い文と見本。必要なら通訳
  4. 場所:原則として個別に話す
  5. 回数:理解を確かめ、改善の期限を決める

注意の後は、本人にやって見せてもらいます。

パワハラに近づく

  1. 目的:怒りの発散や見せしめ
  2. 内容:人格・国籍・日本語の力に触れる
  3. 言い方:大声で威圧する。早口で長時間
  4. 場所:人前で繰り返す
  5. 回数:伝わったか確かめず、同じ注意を何度も

チャットで全員に向けて叱る文を送るのも、指針が挙げる例に近い形です。

指針の例をもとにした編集部の整理です。出典:厚生労働省「パワハラ指針」(2026年10月1日適用版)

まず「伝わっていたか」を確かめる

同じミスが続くとき、原因が「知らなかった」「理解できなかった」にあることは珍しくありません。注意の前に、手順を本人にやって見せてもらい、どこで手が止まるかを見ます。理解できていなかったなら、必要なのは叱責ではなく教え直しです。言い換えの具体例はやさしい日本語で伝えるで紹介しています。

強く注意してよい場面もある

指針は、パワハラに当たらない例として2つを挙げています。遅刻など社会的ルールを欠いた言動を再三注意しても改善されない人に、一定程度強く注意すること。業務の内容に照らして重大な問題行動をした人に、一定程度強く注意することです。安全装置を外す、保護具を着けないといった行為は、その場で止めて構いません。強く注意したら、落ち着いてから理由を説明し、日時と内容を記録に残します。

注意の言葉は「一文・一つ」にする

「なんでいつもこうなの。前も言ったよね」では、何を直せばよいかが伝わりません。「手袋をしてから、機械に触ってください」のように、1つの文で1つの行動を伝えます。

外国人社員がハラスメントを相談できる窓口のつくり方

相談の入口は、社内・母語・公的の3つを用意し、入社の日に1枚のカードで渡します。社内の窓口だけでは、相手が上司や先輩のときに言い出せません。母語の窓口だけでは、会社が事実を知るまでに時間がかかります。

図6相談の入口を3つにする

  • 1社内の窓口

    現場の指揮命令とは別のラインの2人に。たとえば総務の担当者と、別部署の管理職。男女1人ずつにすると、性的な言動の相談もしやすくなります。

  • 2母語の窓口

    1号の支援を委託している登録支援機関。相談・苦情には、本人が十分理解できる言語で、勤務日に週3日以上、休日に1日以上対応することが求められています。

  • 3公的な窓口

    外国人労働者向け相談ダイヤル(13言語、平日10時〜15時で正午〜13時を除く。言語ごとに曜日が違う)、総合労働相談コーナー、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)。

夜間・休日は、労働条件の相談なら労働条件相談ほっとライン(14言語、平日17時〜22時、土日祝日9時〜21時)も使えます。出典:厚生労働省「外国人労働者向け相談ダイヤル・労働条件相談ほっとライン」(2026年10月確認)、出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日一部改正)

案内カードに書くこと

  • 相談できることの例:暴言、からかい、性的な言動、無視、客からの嫌がらせ
  • 社内の窓口の名前、電話・メール・チャットの連絡先、受付時間
  • 母語で相談できる窓口と、その対応言語・曜日
  • 秘密を守ること、相談しても不利益な扱いをしないこと
  • 公的な窓口の名前と電話番号

国の多言語リーフレットを一緒に渡す

厚生労働省は「職場におけるハラスメントは許されない行為です」というリーフレットを公開しています。英語・中国語・ベトナム語・インドネシア語・ネパール語・モンゴル語など、12以上の言語の版があります。会社の方針文と並べて渡せば、日本の職場ではハラスメントが許されないことを、本人の言葉で確かめてもらえます。

定期面談の聞き方を決めておく

1号の定期面談は、3か月に1回以上、本人と監督する立場の人のそれぞれと行います。本人との面談は「困っていることはありますか」で終わらせません。「仕事中に嫌な言い方をされたことはありますか」「休憩はだれと過ごしていますか」と具体的に聞きます。日本人社員との関係づくりは日本人従業員との交流促進も参考になります。母語で相談を受けられる登録支援機関を比べたいときは、特定技能のりあい窓口が、条件に合う会社を最大3社まで無料でご紹介します。順位は付けず、選ぶのは御社です。掲載している会社から紹介手数料を受け取る場合がありますが、手数料の有無で提案の順番や内容は変えません。

ハラスメントの相談を受けたら:事実確認から再発防止までの手順

指針が求めるのは、迅速で正確な事実確認、被害者への配慮と行為者への適正な措置、そして再発防止です。外国人社員の相談では、ここに「通訳を誰にするか」と「記録を何語で残すか」が加わるので、先に決めておきます。

  1. 本人の言語で話を聞き、記録する

    通訳は、行為者と利害関係のない人に頼みます。登録支援機関の通訳が使えるなら、そちらを優先します。日時・場所・言われた言葉・目撃者を、本人の言葉のまま書き、日本語訳を添えます。

  2. 本人の安全を確保する

    必要ならシフトや持ち場を分けます。動かすのは原則として行為者の側です。相談した人を不利な配置に移すと、不利益な取扱いと受け取られます。

  3. 双方と目撃者から事実を確かめる

    行為者にも言い分を聞き、食い違えば第三者に確かめます。言葉の行き違いで誤解が生じていないかも、通訳を介して確認します。

  4. 措置を決め、本人に伝える

    就業規則にもとづく注意・配置換え・懲戒などを決めます。結果と今後の対応は、本人が分かる言語で伝えます。

  5. 再発防止を全員に示す

    方針を改めて周知し、言い換えの例を朝礼や研修で共有します。相談したことを理由に不利益な扱いをしないことも、もう一度伝えます。

  6. 記録を保管し、支援機関と共有する

    1号の支援として受けた相談は、相談記録書(参考様式第5-4号)にも残します。共有する範囲は、本人の了解を得て決めます。

やってはいけない対応

  • 「文化の違いだから」と取り合わない
  • 当事者どうしを同じ席に呼び、話し合いで解決させる
  • 相談した本人を、別の持ち場や勤務時間に移す
  • 日本語が達者な側の説明だけで判断する
  • 「ビザに響く」とほのめかして相談を取り下げさせる

1号の義務的支援には、定期的な面談と行政機関への通報が含まれます。賃金の不払いなど労働関係法令の違反が疑われる場合、支援の担当者は労働基準監督署などへの通報を求められます。ハラスメントの陰に労働条件の問題が隠れていないかも、あわせて確かめましょう。

客からの言動と求職者へのセクハラ:2026年10月からの新しい義務

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)と、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も、事業主の義務になりました。旅館やホテル、飲食店、介護施設のように、外国人スタッフが客や利用者と直接話す職場では、とくに備えが要ります。

カスハラの3つの要素

指針は、職場で顧客等が行う言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをカスハラとしています。正当なクレームは含みません。例として、人格を否定する言動、土下座の強要、大声での威圧、長時間の居座りや電話での拘束が挙がっています。会社には、方針の明確化と周知、相談体制、事後の対応、悪質な言動への対処の方針、相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止が求められます。

外国人スタッフが標的になったとき

「日本人のスタッフに代えて」「日本語が分からないのか」と言われたときは、要望の中身で分けます。説明が足りなかったのなら、責任者が代わって説明します。国籍や人格を攻撃する言葉が続くなら、スタッフを現場から離し、日時と言葉を記録します。誰がどの時点で代わるかを決めて全員に伝えておくことが、指針の求める「対応の手順」にあたります。

旅館・ホテルの場合

旅館業法は2023年12月13日施行の改正で、カスハラに当たる特定の要求をする人の宿泊を拒めるようにしました。拒否するかどうかは客観的な事実にもとづいて判断し、理由を聞かれたら丁寧に説明することが求められます。改正法は、従業者に必要な研修の機会を与えるよう努めることも定めています。宿泊分野の受け入れ要件は特定技能の対象19分野一覧で確認できます。

求職者へのセクハラも対象に

面接や職場見学に来た求職者への性的な言動も、防止措置の対象になりました。面接は2人以上で行う、私的な連絡先を聞かない、面接後の連絡は会社のアドレスからだけにする、といったルールを決めておきます。

想定ケース:温泉旅館(従業員38人)の採用担当が、「冗談」の線引きを全員で決めた理由

想定ケース(利用イメージ)について:この章は、特定技能の会社選びでよく寄せられる相談をもとに、編集部が場面を再構成した想定インタビューです。実在の企業・人物の発言ではありません。数値は公的資料にもとづく目安です。

特定技能(宿泊)の社員5人を雇う温泉旅館で、採用を担当する50代男性の想定インタビューです。

  • 「言わないこと」と言い換えを12項目の表にし、パートを含む従業員38人全員が60分の勉強会を受けた
  • 相談の入口を3つにして案内カードを配ると、半年で4件の相談が寄せられ、3件は1週間以内に結果を本人に伝えた
  • 宿泊客からの言動に「責任者が代わる」基準を決め、外国人スタッフを1人で矢面に立たせないようにした

――取り組みの後、何が変わりましたか。

相談が来るようになったことです。それまで外国人のスタッフから相談を受けたことは一度もありませんでした。窓口を3つにしてカードを渡したら、半年で4件です。調理場での言葉づかいが2件、宿泊のお客様からの言動が1件、寮の同室の人とのことが1件でした。

――見直すきっかけは何でしたか。

登録支援機関の定期面談です。入社2年目のスタッフが母語で「調理場で『あなたの国の人は時間にルーズ』と何度も言われる。辞めることも考えた」と話したと聞きました。言ったのはベテランで、本人は冗談のつもりでした。正直に言うと、私もその場にいたら笑っていたかもしれません。

――それまでは、何に困っていましたか。

何がアウトなのかを、誰も言葉にできていなかったことです。注意すると「冗談も言えないのか」と返される。外国人スタッフは笑ってやり過ごす。私は採用の担当なので、現場の言葉づかいにどこまで口を出していいのか、迷いもありました。

――どこで迷い、何で決めましたか。

ルールを細かく作ると、現場が黙ってしまうのではないか、という点です。決め手は、国の指針が「平均的な労働者の感じ方」で判断すると書いていたことでした。言った側の意図ではない。それなら冗談を禁止するのではなく、「国籍・見た目・日本語の上手下手をネタにしない」の3つに絞ろう、と。支援機関の担当者が「母語での聞き取りはこちらでできます。ただ、事実確認と処分は会社にしかできません」と、できることとできないことを分けて話してくれたのも助かりました。

――進めるうえで、つまずいたことはありますか。

お客様への対応です。「日本人を出して」と言われたとき、どうするか決めていなかった。今は、説明が足りない場合は私か支配人が代わる、国籍を責める言葉が続く場合はスタッフを下げる、と決めています。勉強会も1回で終わらせず、毎月の朝礼で言い換えを1つずつ紹介しています。5分ですが、続けるうちに「その言い方はやめよう」と現場から声が出るようになりました。

相談は無料です。条件に合う会社を最大3社までご紹介します。最終的に選ぶのは御社です。

よくある質問

冗談のつもりでも外国人社員へのハラスメントになる?

なり得ます。パワハラかどうかは、言った側の意図ではなく、同じ状況で言われた平均的な労働者がどう感じるかを基準に判断されます。国籍や日本語の力をからかう言葉は、繰り返されると就業環境を害し、人格を否定する言動と受け取られるおそれがあります。社内では「国籍・見た目・日本語の上手下手をネタにしない」のように、避ける話題をはっきり決めておくと迷いが減ります。

外国人社員を強く叱ると、パワハラになりますか?

必要な注意を強めに伝えること自体は、すぐにパワハラにはなりません。指針も、再三注意しても改善されない場合や重大な問題行動に、一定程度強く注意することは該当しない例としています。人前で大声で繰り返す、人格や国籍に触れる、長時間責め続けるといった方法になると、指導の範囲を超えやすくなります。叱る前に、手順が伝わっていたかを確かめてください。

仕事中は日本語で話すよう求めてもよいですか?

安全や品質のために、作業中の指示や報告を日本語に統一することには業務上の理由があります。理由を本人の分かる言葉で説明し、どの場面のルールかを書面で示しておきましょう。休憩中の私的な会話まで禁じると、業務上の必要性を説明しにくくなります。

外国人社員同士のトラブルも、会社が対応する必要がありますか?

あります。パワハラには同僚や部下の集団による行為も含まれ、職場の人間関係で就業環境が害されれば、会社の対応が求められます。同じ国の社員どうしだと通訳を同国の同僚に頼みがちですが、内容が広まらないよう、利害関係のない通訳を使います。

登録支援機関に、ハラスメントの相談対応を任せてもよいですか?

母語での相談の受付や聞き取りは任せられます。1号の義務的支援には相談・苦情への対応が含まれ、本人が十分理解できる言語で対応することが求められています。ただし、ハラスメント防止の措置を講じる義務は雇っている会社にあり、事実確認や行為者への措置は会社が行います。相談を受けたときの連絡の流れを、委託契約の段階で決めておきましょう。

お客様が外国人スタッフに差別的なことを言ったら、どうすればよいですか?

スタッフを1人で対応させず、責任者が代わります。2026年10月1日から、カスハラの防止措置は事業主の義務です。人格や国籍を攻撃する言動が続く場合はスタッフを現場から離し、日時と言葉を記録します。後で本人と話し、必要なら勤務の調整や相談窓口の案内をします。

従業員が少ない会社でも、ハラスメント防止の措置は必要ですか?

必要です。パワハラ防止の措置は2022年4月1日から中小企業も義務で、規模による例外はありません。少人数の会社では、社長とは別の1人を窓口にし、母語の窓口や公的な相談先も必ず案内しておくと、相手が社長や上司の場合でも相談の道が残ります。

この記事の編集方針と出典

  • 制度・数値は、出入国在留管理庁・厚生労働省・所管省庁・自治体などの公表資料で確認し、時点を書いています(確認日:2026年10月14日)。
  • 制度は改正されることがあります。申請の前に、必ず最新の公表資料で確認してください。
  • 「想定ケース」は、よくある相談をもとに編集部が再構成したもので、実在の企業・人物の発言ではありません。
  • 特定技能のりあい窓口は、掲載している人材紹介会社・登録支援機関から紹介手数料を受け取る場合があります。手数料の有無で、ご提案の順番や内容は変えません。
  • 誤りにお気づきの場合は、下のフォームからお知らせください。確認のうえ修正します。

出典

  1. 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(2026年10月確認)
  2. 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号、2026年10月1日適用版)(2026年10月1日適用)
  3. 厚生労働省「カスタマーハラスメントに関する指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)(2026年10月1日適用)
  4. 厚生労働省・出入国在留管理庁「改正労働施策総合推進法等の施行によるカスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止対策の強化について」(2026年5月14日)
  5. 厚生労働省・出入国在留管理庁「改正労働施策総合推進法等の施行によるハラスメント防止対策の強化について」(2020年2月14日)
  6. 厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書概要」(2024年1月調査・2025年8月正誤反映)
  7. 法務省委託調査(公益財団法人人権教育啓発推進センター)「外国人住民調査報告書-訂正版-」(2016年11〜12月調査・2017年6月)
  8. 厚生労働省「外国人労働者向け相談ダイヤル・労働条件相談ほっとライン」(2026年10月確認)
  9. 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(令和8年5月29日改正を反映)
  10. 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日一部改正)
  11. e-Gov法令検索「労働基準法」(第3条)(2026年10月確認)
  12. e-Gov法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(2026年10月確認)
  13. 新潟県「旅館業法の改正について(令和5年12月13日施行)」(2026年10月確認)

最終更新:(2026年10月版)

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