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https://tokutei-noriai.blog/kyuyo-trouble/ 印刷日:2026年10月15日

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外国人社員の給与トラブルの防ぎ方|未払い・残業代・控除の説明

「手取りが違う」「残業代が足りない」を、説明・記録・計算の3点で起こさない職場の仕組み

「聞いていた手取りと違う」「残業代が少ない気がする」。外国人社員から給与について聞かれ、うまく答えられなかった経験はないでしょうか。外国人の給与トラブルは、説明の不足、労働時間の記録漏れ、法律で認められない控除の3つから起きることがほとんどです。2024年には、特定技能外国人から労働基準監督署などへの申告107件のうち90件が賃金・割増賃金の不払でした。この記事では、残業代の未払いが起きる原因、控除のルール、給与明細を外国語で説明する方法、記録の残し方、未払いが分かったときの手順を、厚生労働省の資料と法令で示します。

この記事の結論
  • 申告の8割以上が賃金の不払:2024年に特定技能外国人から労働基準監督署などに寄せられた申告107件のうち、90件が賃金・割増賃金の不払でした。監督指導では割増賃金の違反が2番目に多く、17.2%でした。
  • 残業代の未払いは「記録」と「計算式」から:着替えや片付けの時間を入れない、1日ごとに切り捨てる、手当を計算から外す。この3つがよくある原因です。
  • 控除は法令か労使協定によるものだけ:寮費や光熱費は協定が必要です。途中で辞めたらビザ費用を返す、といった約束は違約金にあたり認められません。
  • 明細は入社前・初回・変更時の3回説明する:とくに2年目の6月は住民税で手取りが変わるため、前月に知らせておきます。

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この記事の目次

結論:外国人社員の給与トラブルは「説明・記録・計算」の3点で防ぐ

外国人社員の給与トラブルは、ほとんどが3つの原因から起きます。手取りや控除の説明が足りない。労働時間の記録が漏れて残業代が少なくなる。法律で認められない控除をしている。この3つを、説明・記録・計算の仕組みで先に塞いでおけば、大半は防げます。

数字にも表れています。2024年、特定技能外国人から労働基準監督署などに寄せられた申告は107件で、そのうち90件が賃金・割増賃金の不払でした。特定技能外国人を使用する事業場への監督指導でも、割増賃金の支払の違反は17.2%で、安全基準に次いで2番目に多い項目です。

図1特定技能外国人の職場で多い賃金の問題(2024年)

  • 107件特定技能外国人からの申告労働基準関係法令違反の是正を求めたもの
  • 90件賃金・割増賃金の不払申告で最も多い内容
  • 17.2%割増賃金の支払の違反監督指導5,750事業場のうち991事業場
  • 6件最低賃金未満の申告申告の内容は複数に数える
申告の内容は、賃金・割増賃金の不払、解雇手続の不備(15件)、最低賃金未満の順でした。出典:厚生労働省「特定技能外国人を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況(令和6年)」(2025年9月26日公表)

トラブルは「入社して最初の数か月」と「6月」に起きやすい

最初の給与で、額面と手取りの差に驚く人は少なくありません。社会保険料、所得税、寮費が一度に引かれるからです。もう1つの山が2年目の6月で、前年の所得にかかる住民税の天引きが始まり、手取りがまた変わります。どちらも、前もって説明していれば防げる種類のトラブルです。

外国人の残業代の未払いが起きる5つの原因

残業代の未払いは、悪意より仕組みの穴から起きます。どこで時間が抜け、どこで計算がずれるかを知っておけば、点検の場所が分かります。

残業代の未払いが起きる主な原因と、防ぎ方
原因起きやすい場面防ぎ方
①準備・片付けを時間に入れない指定の作業着への着替え、始業前の機械点検、終業後の清掃、参加が義務の研修打刻の場所を更衣室の前に移す。研修は勤務時間として記録する
②1日ごとに切り捨てる毎日の残業を15分単位や30分単位で切り捨てる1分単位で記録する。端数処理は1か月の合計に対してだけ
③手当を計算から外す特定技能の人だけに払う手当や技能手当を、割増賃金の基礎に入れない法令で除外できる7種類以外は、すべて基礎に入れる
④固定残業代の精算漏れ決めた時間を超えた分を払っていない。何時間分かを説明していない基本給・時間数と金額・超えた分を払うことの3点を書面で示す
⑤自己申告と実態のずれ本人が日本語の申告書に少なめに書く。上司が書き直す入退場やパソコンの記録と照らし、大きなずれは調べて直す

①と⑤は、厚生労働省の労働時間の把握に関するガイドラインが、労働時間にあたる例や自己申告制の条件として示しているものです。使用者の指示による着替えなどの準備や、業務に関連した後片付け、義務的な研修の時間は労働時間にあたります。

端数の切り捨ては「1か月の合計」に対してだけ

1か月の時間外・休日・深夜労働のそれぞれの合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは認められています。一方、日ごとに端数を処理することはできません。毎日の15分未満を切り捨てる勤怠システムの設定は、すぐに見直しましょう。

割増賃金の基礎から外せる手当は7種類だけ

割増賃金の計算から外せるのは、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金です。2024年の監督指導の事例では、特定技能外国人にだけ毎月払っていた特別手当を、計算の基礎から外していた建設会社がありました。是正勧告を受け、不足分の約12万円を支払っています。

固定残業代は3つを書面で示す

固定残業代を使うなら、厚生労働省が示す3点を雇用条件書に書きます。固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法、固定残業時間を超える時間外・休日・深夜労働には割増賃金を追加で払うこと、です。「残業代込み」とだけ書いた契約は、外国人社員にとって何時間分かが分からず、最も誤解を生みやすい形です。

図2手当を計算から外したときの差額(試算)

  • 正しい計算:月給22万円(基本給20万円+毎月の手当2万円)22万円÷月平均所定労働時間160時間=1,375円。×1.25=1,718.75円。時間外20時間で34,375円
  • 誤った計算:手当2万円を外す20万円÷160時間=1,250円。×1.25=1,562.5円。時間外20時間で31,250円
  • 差額1か月3,125円。12か月で37,500円、36か月で112,500円の未払いになる
金額は架空の試算です。月60時間を超える時間外は5割以上、休日労働は3割5分以上、深夜(午後10時〜午前5時)は2割5分以上の割増が必要です。出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(第37条)、同「労働基準法施行規則」(第21条)

控除でもめないために:差し引けるもの、差し引けないもの

賃金は、全額を本人に払うのが原則です(労働基準法24条)。差し引けるのは、税や社会保険料のように法令で決まっているものと、過半数労働組合(なければ過半数代表者)と書面で協定したものだけです。協定のない控除は、金額が小さくても違反になります。

給与からの控除:根拠と注意点
項目差し引けるか注意点
所得税・住民税できる(法令)住民税は前年の所得にかかり、6月に額が変わる
健康保険・厚生年金・雇用保険の本人負担分できる(法令)会社負担分まで引かない
寮費・食費・光熱費労使協定があればできる特定技能の社宅は日本人と同等の条件で、住居で利益を得てはいけない
作業着・工具の代金協定があればできる業務に必要な物は会社負担にするほうが争いになりにくい
途中退職時の渡航費・ビザ費用の返還できない労働契約の不履行に違約金や損害賠償額を定める契約は禁止(16条)
前借金との相殺できない労働を条件とする前貸しを賃金と相殺するのは禁止(17条)
会社による強制的な積立てできない労働契約に附随する貯蓄の契約は禁止(18条)
1号の支援にかかる費用できない義務的支援の費用は、直接・間接を問わず本人に負担させない

事例:日本語だけの契約書にあった「ビザ費用の返還」

厚生労働省が公表した2024年の事例では、社会福祉施設で、途中で退職を申し出た特定技能の人の賃金からビザ取得費用などが差し引かれました。日本語だけの契約書に、途中で辞めたら費用を返すという定めがあり、違約金を定めたものとして是正勧告を受けています。施設は、審査で出した日本語と母国語併記の契約書に切り替えて違約金の定めをなくし、差し引いた約23万円を返しました。本人と結ぶ書類は、入管に出した雇用条件書と中身をそろえることが基本です。

協定は「項目」と「決め方」まで書く

控除の協定には、寮費なら月いくらか、光熱費なら実費の割り方はどうするか、まで書きます。協定書と寮の利用の取り決めを本人の言語で示し、署名をもらっておけば、後で「聞いていない」と言われたときに説明できます。支払い方法と協定の結び方は外国人社員の賃金の支払い方法で詳しく扱っています。

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給与明細を外国語で説明する方法:項目ごとの説明例

給与を払うときは、支払明細書を本人に渡すことが所得税法231条で決まっています。本人の承諾を得れば電子データで渡すこともできますが、本人が書面を求めたときは書面で渡します。外国人雇用管理指針は、賃金や控除の内容を、母国語など本人が理解できる言語や平易な日本語で説明するよう求めています。

給与明細の主な項目と、やさしい日本語での説明例
明細の項目説明の例(やさしい日本語)
基本給・手当毎月決まって払うお金です。手当の名前と理由を1つずつ言います
時間外手当・深夜手当・休日手当決まった時間より多く働いた分です。今月は何時間で、1時間いくらかを見せます
健康保険・介護保険病院に行ったときに使う保険です。会社も保険料を払っています
厚生年金年金の保険です。国に帰るとき、条件を満たせば一部が戻る制度があります
雇用保険仕事がなくなったときなどのための保険です
所得税今年の給料にかかる国の税金です。12月に1年分を計算し直します
住民税去年の給料にかかる市や町の税金です。6月から金額が変わります
寮費・光熱費会社と決めた約束(協定)で引いているお金です。約束の紙を見せます

厚生年金の「戻る制度」(脱退一時金)を説明するときは、年金と脱退一時金の説明のしかたの文例が使えます。

国が用意している多言語の資料を使う

一から翻訳しなくても使える資料があります。明細の説明シートを作るときは、まず次の3つから言い回しを借りると、訳語がそろいます。

図3給与の説明に使える公的な多言語資料

  • 1モデル労働条件通知書(厚生労働省)

    英語・中国語・ベトナム語・インドネシア語・タガログ語・ミャンマー語・ネパール語・カンボジア語・モンゴル語・タイ語など13言語。労働条件を外国語で示すためのひな形です。

  • 2雇用条件書の参考様式(出入国在留管理庁)

    特定技能の雇用条件書(第1-6号)は、英語・ベトナム語・タガログ語・インドネシア語・タイ語・ミャンマー語など10言語の版があります。

  • 3住民税のリーフレット(総務省)

    外国人労働者向けに、英語・中国語・ベトナム語・ポルトガル語の版があります。住民税の仕組みを説明するときに使えます。

どれも無料で入手できます。自社の明細に合わせて、項目名だけ置き換えて使います。出典:厚生労働省「労働基準関係リーフレット」、出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式一覧」(2026年8月20日更新)、総務省「外国人の方の個人住民税について」(2026年10月確認)

2年目の6月に「手取りが減った」と言われないために

住民税は、1月1日に日本に住所がある人に、前年の所得をもとに課税されます。年の途中に来日した人は、1年目は住民税の天引きがなく、翌年の6月から始まることが多くなります。5月の給与日に「来月から住民税が引かれます。1か月の額はこのくらいです」と、通知書の数字を見せて伝えておきましょう。

外国人に賃金を説明する方法:入社前・初回の給与・変更時の3回

説明は1回では足りません。入社前の約束、最初の給与の明細、手取りが変わるときの3回に分けると、そのつど具体的な数字で話せます。説明した日と言語、使った資料を記録に残すところまでが1セットです。

  1. 入社前:額面と手取りの見込みを示す

    雇用条件書を本人の言語で示し、基本給、手当、時間外の割増率、主な控除と、手取りの見込み(試算)を説明します。特定技能では、報酬に関する説明書(参考様式第1-4号)も使えます。

  2. 最初の給与:明細を1行ずつ一緒に読む

    15分ほど時間を取り、項目ごとに「何のお金か」を説明します。時間外の時間数は、本人の勤怠記録と並べて見せます。

  3. 変わる前に知らせる

    住民税の天引きが始まる6月、算定基礎届で保険料が見直されるとき、最低賃金の改定や昇給のときは、変わる前の月に知らせます。

  4. 分かったかを本人の言葉で確かめる

    「今月の手取りが先月より少ない理由は何ですか」と聞き、本人に説明してもらいます。「分かりましたか」だけでは確認になりません。

  5. 質問の窓口を決めて記録する

    給与の質問を受ける人を決め、母語で聞きたいときは登録支援機関につなぎます。説明した日・言語・資料・説明した人を記録します。

「同等以上」の説明も準備しておく

特定技能の報酬は、日本人が同じ業務に就く場合と同等以上でなければなりません。本人から「日本人より低いのでは」と聞かれたときに、賃金規定や比べた相手の考え方を説明できるようにしておくと、不信感が広がりません。日本人社員への説明の仕方は外国人受け入れ前の社内説明も参考になります。最低賃金の改定で給与を見直すときの手順は特定技能と最低賃金で確認できます。

記録の残し方:労働時間・控除・説明の3つをそろえる

給与トラブルで会社を守るのは、記録です。未払いの賃金を請求できる期間は5年(当分の間は3年)で、賃金台帳などの記録も5年(当分の間は3年)の保存が必要です。3年前の残業について聞かれても答えられるよう、次の3種類の記録をそろえます。

図4給与トラブルに備えて残す3つの記録

  • 労働時間タイムカードやICカードなどの客観的な記録。賃金台帳には労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数を、給与を払うたびに書く。
  • 控除の根拠労使協定書、寮や食事の利用の取り決め、金額の決め方(実費の内訳)。本人の言語の版と署名。
  • 説明の記録雇用条件書の説明、初回の明細説明、住民税などの事前の知らせ。日付・言語・資料・説明者。
3つがそろっていれば、本人からの質問にも、監督指導にも、同じ資料で答えられます。出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」、広島労働局「未払賃金が請求できる期間などが延長されます」

自己申告で記録するときの条件

やむを得ず自己申告で労働時間を記録する場合、ガイドラインは3つのことを求めています。対象者と管理者への十分な説明、入退場やパソコンの記録との照合と補正、そして申告より在社時間が長いときの理由の確認です。残業を申告できる時間に上限を設けることも認められません。日本語の申告書だけでは、外国人社員が書き方を誤ることがあります。記入例を母語で用意しましょう。

定期届出の数字とも突き合わせる

特定技能では、毎年の定期届出で、時間外労働時間、きまって支給する給与、控除額などの月平均を報告します。届出の数字と賃金台帳、雇用条件書の数字が食い違っていると、説明を求められる原因になります。届出の前に3つを並べて確かめると、計算のずれもここで見つかります。

外国人社員の給与の未払いが分かったときの是正手順

未払いが分かったら、本人に言われる前に、会社から直して払うのが原則です。隠したり、次の昇給で埋め合わせたりすると、後でより大きな問題になります。次の順で進めます。

図5給与の未払いが分かったときの是正の流れ

  1. 範囲を確かめる原因、期間、対象者、金額を特定します。退職した人や帰国した人も含め、請求できる期間(当分の間3年)を目安にさかのぼります。
  2. 差額を払う次の給与日を待たず、計算できた分から支払います。退職者には、連絡先と振込先を確かめて支払います。
  3. 本人に書面で説明する原因、期間、金額、今後の対策を、本人の言語で書いて渡します。支援機関の通訳を通すと伝わりやすくなります。
  4. 仕組みを直す勤怠の端数処理、割増賃金の計算式、控除の協定など、原因になった設定を直し、翌月の給与で確かめます。
  5. 特定技能の届出を確かめる未払いが労働関係法令の違反にあたる場合、受入れ機関の基準を満たさない状態になり得ます。基準不適合の届出(知った日から14日以内)が必要か、地方出入国在留管理局に確認します。
自主的に直した経緯も、日付つきで記録に残しておきます。出典:広島労働局「未払賃金が請求できる期間などが延長されます」、出入国在留管理庁「基準不適合に係る届出」(2026年10月確認)

労働基準監督署の是正勧告を受けてから直すより、自主的に直したほうが、本人との関係も保ちやすくなります。給与以外の契約トラブルの防ぎ方は特定技能の契約トラブル事例、受け入れ全体の失敗例は特定技能の受け入れでよくある失敗10にまとめています。

想定ケース:製材所(従業員260人)の総務部長が、勤怠の「15分切り捨て」をやめた理由

想定ケース(利用イメージ)について:この章は、特定技能の会社選びでよく寄せられる相談をもとに、編集部が場面を再構成した想定インタビューです。実在の企業・人物の発言ではありません。数値は公的資料にもとづく目安です。

木材産業分野で特定技能の社員12人を雇う製材所で、給与と労務を担当する総務部長(60代女性)の想定インタビューです。

  • 勤怠の端数処理を1分単位に改め、過去3年分を計算し直して、12人に合計約38万円を追加で支払った
  • 給与明細の項目説明シートを2言語とやさしい日本語で作り、給与についての問い合わせが月20件ほどから5件ほどに減った
  • 住民税が始まる前月に個別の説明をしたところ、6月の手取りへの苦情はなくなった

――見直して、何が変わりましたか。

給与の日の雰囲気です。以前は明細を配ると、総務の前に何人も並んでいました。今は項目説明シートを見れば大体のことが分かるので、問い合わせは月5件ほど。そのほとんどが、引っ越しや家族の扶養の相談です。

――見直すきっかけは何でしたか。

特定技能の社員が、近くの別の工場で働く友人と明細を見比べて、「私の残業代は少ないのでは」と支援機関に相談したんです。調べると、勤怠システムが毎日の残業を15分未満切り捨てにしていました。日本人の社員も同じ設定で、何年も誰も気づいていなかった。正直、背筋が寒くなりました。

――ほかにも困っていたことはありましたか。

朝の機械の点検と、作業着への着替えです。点検は始業の15分前に始めるのが当たり前になっていて、タイムカードは点検の後に押していました。打刻の場所を更衣室の前に移して、点検は勤務時間の中に入れました。

――どこで迷い、何で決めましたか。

過去の分をどこまで計算し直すかです。社労士の先生に相談して、請求できる期間の3年分をさかのぼると決めました。日本人の社員も含めてです。支援機関の担当者からは「本人への説明は母語でお手伝いできます。ただ、金額の計算と支払いは御社の責任です」とはっきり言われました。役割が分かれていたので、かえって進めやすかったですね。

――説明で工夫したことはありますか。

「ごめんなさい」だけで終わらせず、原因、期間、金額を1枚の紙にして、日本語と母国語で渡しました。最初は「会社が間違えるなんて」と驚いた人もいましたが、自分の勤怠の記録と照らして説明すると、納得してくれました。今は、昇給や住民税で手取りが変わる前の月に、必ず一言知らせるようにしています。

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よくある質問

外国人社員の給与の未払いが分かったら?

原因・期間・対象者・金額を特定し、次の給与日を待たずに差額を支払います。賃金を請求できる期間は5年(当分の間は3年)なので、退職した人も含めて、その期間を目安にさかのぼります。本人には原因と金額を本人の言語で書面にして説明し、勤怠や計算式の設定を直します。特定技能では、法令違反にあたる場合に基準不適合の届出が必要になり得るので、地方出入国在留管理局に確認してください。

給与明細は、外国語で作らないといけませんか?

明細の言語を決めた法律はありません。ただし、支払明細書を渡すことは所得税法で決まっています。外国人雇用管理指針も、賃金や控除の内容を本人が理解できる言語や平易な日本語で説明するよう求めています。明細そのものは日本語のままでも、項目ごとの説明シートを母語とやさしい日本語で用意すれば、多くの疑問に答えられます。

寮費を給与から差し引くには、何が必要ですか?

過半数労働組合(なければ過半数代表者)との書面による労使協定が必要です。協定がないまま差し引くと、労働基準法24条の全額払いの原則に反します。特定技能の社宅は日本人と同等の条件で提供し、住居で利益を得てはいけないとされています。金額の決め方を本人の言語で示しておきましょう。

作業着への着替えや始業前の準備の時間も、残業代の対象ですか?

対象になります。厚生労働省のガイドラインは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を労働時間としています。例として、着用が義務の作業着への着替えなどの準備、業務に関連した後片付け、参加が義務の研修の時間を挙げています。これを含めて1日8時間・週40時間を超えれば、時間外の割増賃金が必要です。打刻の場所とタイミングを、実際の動きに合わせて見直してください。

途中で辞めたら渡航費を返してもらう約束は、できますか?

できません。労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約は、労働基準法16条で禁止されています。2024年には、途中退職時にビザ費用を返させる定めのある契約で是正勧告を受け、差し引いた約23万円を返した事例も公表されています。

給与明細をメールやアプリで渡してもよいですか?

本人の承諾を得れば、電子データで渡せます。本人が書面での交付を求めたときは、書面で渡します。承諾を得るときは、見方や保存のしかたも母語で説明しておくと、後で「見られない」という問い合わせが減ります。

本人が「もっと残業したい」と言ったら、上限を超えてもよいですか?

超えられません。時間外労働は36協定の範囲内でしか命じられず、特別条項があっても、時間外と休日労働の合計は月100時間未満、2〜6か月の平均80時間以内です。本人の希望でも同じです。収入を増やしたいという相談には、昇給の基準や資格の取得など、別の道を一緒に考えます。

この記事の編集方針と出典

  • 制度・数値は、出入国在留管理庁・厚生労働省・所管省庁・自治体などの公表資料で確認し、時点を書いています(確認日:2026年10月14日)。
  • 制度は改正されることがあります。申請の前に、必ず最新の公表資料で確認してください。
  • 「想定ケース」は、よくある相談をもとに編集部が再構成したもので、実在の企業・人物の発言ではありません。
  • 特定技能のりあい窓口は、掲載している人材紹介会社・登録支援機関から紹介手数料を受け取る場合があります。手数料の有無で、ご提案の順番や内容は変えません。
  • 誤りにお気づきの場合は、下のフォームからお知らせください。確認のうえ修正します。

出典

  1. 厚生労働省「外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導、送検等の状況」(2025年9月26日)
  2. 厚生労働省 同 別紙2(特定技能外国人)(2024年の状況)
  3. 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日策定)
  4. 山口労働局・労働基準監督署「労働時間の『切り捨て』はダメ!~適切な端数処理をしましょう~」(2022年10月)
  5. 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」(2026年10月確認)
  6. e-Gov法令検索「労働基準法」(第16条〜第18条・第24条・第37条・第108条・第109条・第115条)(2026年10月確認)
  7. e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(第21条)(2026年10月確認)
  8. 広島労働局「未払賃金が請求できる期間などが延長されます」(2026年10月確認)
  9. e-Gov法令検索「所得税法」(第231条)(2026年10月確認)
  10. 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(令和8年5月29日改正を反映)
  11. 厚生労働省「労働基準関係リーフレット」(外国人労働者向けモデル労働条件通知書)(2026年10月確認)
  12. 総務省「外国人の方の個人住民税について」(2026年10月確認)
  13. 出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式一覧」(2026年8月20日更新)
  14. 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日一部改正)
  15. 出入国在留管理庁「基準不適合に係る届出」(2026年10月確認)
  16. e-Gov法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(2026年10月確認)

最終更新:(2026年10月版)

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